風立ちぬの感想を書いたところで、ふとポニョでも言いたい事があったのを思い出しました。
なので今更ですが、ポニョについてちょっと書いてみます。
ポニョをみたとき、なんだかわからないもやもや感が残りました。
なにか一つ、大事な情報が抜け落ちてるようなもやもやです。
特にトキさんと、フジモトあたりに…もやもや…
なんて考えていたら、
エンディング曲が終わる頃にふと一つの答えにたどりつきました。
フジモトとトキさんって、親子なんじゃない?
そう考えると顔も似てます。鼻なんかそっくり。
すると溜まってたもやもやが全部一気に、将棋倒しみたいにパタパタ解消されていきました。
それがとても爽快で、なんだこの映画、すっごい面白い!って気持ちにさせられてしまいました。
その時私の頭の中で起こった将棋倒しのパタパタを、かいつまんで説明します。
宗介とポニョが出会うずっと前、この町ではもう一つの物語があったんです。
それがフジモトと、グランマンマーレの話。
かつてフジモトとグランマンマーレが、宗介とポニョみたいな関係になった時、
グランマンマーレが人間になるのではなく、フジモトが海に入る決断をしたんです。
トキさんは大事な息子を海にとられてしまいます。
当然、その時も津波が起こります。
この「一つ前の物語」を踏まえてポニョのお話をみてみると、色んな辻褄が合うんです。
トキさんは冒頭でポニョにいじわるな態度をとり、
津波が起こると予言し、
津波のあと一人高台に残って宗介を助けよう試み、
ラストで宗介の無事を泣いて喜びます。
トキさんは宗介に自分の息子を重ねていたんです。
かつてトキさんはフジモトの恋に反対したと思われます。
好きな人と一緒になる事を祝福して貰えなかったフジモトは
「認めて欲しかった人に認めて貰えなかったので、自分も相手を認めてやらない」と
拗ねた状態のまま、かけおち同然で海に入ってしまいます。
フジモトは冒頭で人間を毛嫌いするような発言をしますが、
ラストは世界のほころびを閉じるために必死でポニョを人間にしようとします。
本音は人間を嫌っている訳ではないんです。拗ねていただけ。
ひまわりの人達に「宗介くんを応援してください」と頼むのも、
祝福して貰えなかった自分と宗介を重ねているんじゃないでしょうか。
つまりこのお話は、ポニョと宗介の可愛らしい恋物語の裏側で
フジモトとトキさんが救われる話なんです。
魚のポニョが人間の姿で会いにきた時、宗介はともかく
大人のリサもあっさりとポニョを信じ、受け入れます。
これはトキさんから何か聞いていたと考えれば納得できます。
津波が収まった後、宗介とポニョをおいて一人でひまわりに向かったのも
これからどうするべきか、トキさんの所へ先人のアドバイスを聞きにいったんじゃないでしょうか。
町が海に沈んでしまっても、町の人は皆平気そうな顔をしています。
「一つ前の物語」の津波で、対策や訓練ができていたと考えられます。
この映画のすごいところは、きちんと「ひっかかり」を作ってる所だと思います。
フジモトはかつて人間だった事を映画の中で明言しているのに、なぜ海に入ったかは触れません。
宗介とポニョが晴れてむすばれた時、宗介を抱きしめ、彼の無事を泣いて喜ぶのはトキさんです。
普通に考えれば、そこは母親であるリサの役割のはずです。
こういう細かい「ひっかかり」をちりばめて、気になるように作ってある。
そしてそれが解けると爽快な気持ちになるし、
トキさんとフジモトが顔を合わせるシーンではドキドキします。
「あー、ほんとはお互いに何か言いたい事あるんじゃないの!?」ってなります。
最後、フジモトが海へ帰るシーンは描かれていません。
帰る前にトキさんの所へ行って、二人が和解してたらいいなぁ。